つま先補修完成1.jpg
Q) 当方、イギリスに在住しており、在住をきっかけにノーザンプトンのファクトリーショップにて有名どころの靴を数足買い揃えました。
私も、つま先が減りやすいようでして、先日近所の靴専門の修理屋さんにつま先の補強をお願いしました。
樅山さんのところの、つま先ゴム仕様のようにしてもらうつもりだったのですが、 修理の結果、つま先のゴムにグルーバーで溝が掘られ、新たに縫い直されていました。
糸も太く、縫い方の粗いこと粗いこと。縫い目の粗さが2倍くらいあります。
そして、ウェルトの上に出ている糸がかなり凸凹しています。

そこで、3つ質問があります。
1) オールソール等、次回以降の修理に影響しないでしょうか。
2) 普通、つま先補強は縫い直すものなのでしょうか。それとも、単に貼り付けるだけでも十分なのでしょうか?
3) 御社のつま先ゴム仕様のつま先は、どのようにウェルトとくっついているのでしょうか?

以上、よろしくお願いします。




A) 羨ましい生活環境にお住まいですね。
ただ日本の職人たちも ”気の利き方”、”手先の器用さ”、”企業努力”では、車業界と同様、 決して劣っているとは思いませんので、帰国されてもご安心ください。

そこでまず、つま先の補修に関するこちらの見解からお話しておきます。
つま先を補修・補強するのは、部分的に減りやすい(早く減ってしまう)ので、ソール全体はまだ使える厚みが残っているのに、ソールを張り替えずにつま先の補修をすることによって、ソールを使い切るための手段、ということです。
車に例えると、FF車の場合前輪が減りやすいので、前後をローテーションして4輪とも使い切る、というのと同じことです。
ですからオールソールまでの暫定的措置でよい、というのがこちらの見解です。
あえて暫定的措置と書いたのは、ソールを使い切るまで問題なければ、最低限の措置で済ませる、ということです。
その理由は、ご照会の件に関してお答えしながらご説明します。


> 1) オールソール等、次回以降の修理に影響しないでしょうか。
> 2) 普通、つま先補強は縫い直すものなのでしょうか。それとも、単に貼り付けるだけでも十分なのでしょうか?

グッドイヤーウエルト製法の生命線は、ウエルト(ソールを縫い付けてある靴の回りを1周している幅1センチほどの革)のコンディションに尽きます。
減りすぎてソールを通り越してウエルト部分まですり減らしたり、ソールの張替え修理の際に、 前回ソールを取り付けの際に縫われた糸をウエルトからきれいに抜き去らないと、縫い目の穴が2重に縫われて広がってしまいます。
そうするとすぐに影響は出ないですが、縫い目の穴が広がった分、強度が弱くなり次回以降の張替えの出来る回数が減ってしまう可能性があります。

つまり、縫い直した方がしっかりとした修理かもしれないが、リスクもある、ということです。
今回の件はこれにあたるでしょう。


> 3) 御社のつま先ゴム仕様のつま先は、どのようにウェルトとくっついているのでしょうか?

通常普通に履いて擦り減った段階で、つま先の先端部分の縫目の下糸は切れています。
その部分をカバーするように、元々あった革の形状になるよう、ラバーを接着で貼り付けます。

修理前
つま先減り.jpgつま先補修 ゴム.jpg

修理後
つま先補修完成1.jpgつま先補修 完成2.jpg
擦り減ったつま先部分の接着を良くする為と、ラバーの厚みで元のソールの厚みよりぶ厚くならないように更に表面を薄く削ります。
その際に切れたステッチは縫い直しませんが、如何に最小限の削りで済ませるか、で縫い直す必要はないと思います。(過去のQ&A「Q&A つま先を補修する際のタイミングは」参照ください)
切れたつま先部分の縫い目を縫い直すという方法もありますが、修理時間と費用の面はもちろん、 ウエルトへの負担の面でマイナス要素のほうが多いと思います。(縫い直した方がよい場合ももちろんありますが、稀です)
その削り代を最小限に抑えることにより、普通に履いていただく分には問題ないというのが、こちらの見解です。

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